にきび治療としての経口摂取ビタミンCはなぜ良いのか?
10代から始まり、そして20代、30代と続いてしまうこともある“にきび(尋常性ざ瘡)”。基本的にはホルモンが関与する皮膚疾患であり、治療に難渋するものです。10代、いわゆる成長期はホルモン分泌の活発な時期であるため、にきびは出て然り。そして20代以降、その多くは生活スタイルの変化に伴い、自覚以上のストレスや疲労が関与するため、ホルモンバランスが悪くなることでにきびが続きます。
そのようなにきびに対する治療は、一般皮膚科では外用と内服による治療が主となり、美容医療ではピーリングや点滴などの治療が選択肢にあがります。これ一つをやれば、、、ということではないにきび治療ですが、重要な治療の一つに『ビタミンCの経口摂取』があります。
経口によるビタミンC摂取
ビタミンCは比較的よく知られている美容成分の一つです。例えばしみ治療、美白としては有名なところです。では、にきび治療としてのビタミンCの役割はいかがでしょうか。成書でも具体的には書いていない部分ですが、その役割の主なポイントは“抗酸化作用”と“抗ストレスホルモン生成促進”にあるようです。
最近はあらゆる抗酸化物質が美容において紹介されていますが、ビタミンCは昔からある王道の抗酸化物質です。抗酸化物質は活性酸素を消去して細胞ダメージ、組織ダメージを抑えていきます。にきびは皮膚、毛穴組織におこる炎症で、活性酸素が過度に誘導されている状況です。つまりそこにまず抗酸化としてのビタミンCの作用起点があります。
ストレスとビタミンC
そしてもう一つ、にきびにおいてビタミンCの重要な働きは“ストレス”に対してです。にきびが出始める成長期だけでなく、大人になってもにきびが続いてしまうことは多々あり、大人になってからにきびがでてくるケースもあります。そしてそれらのにきびは“ストレス”が原因であることがほとんどというのも事実です。普通に生活していてもゼロになりにくいのが現代人のストレス、学生から社会人となり、仕事の忙しさや負担、人間関係などさらなる追い打ちで、ストレスの影響が過度にでていきます。20代は“若さ”という武器があるので、ストレスを感じにくいかもしれませんが、実は感じにくいストレスほど身体にとって悪いものはありません。病気もそうですが、症状がでてからでは、だいぶ進行もしていると考えてもよいぐらいだからです。もちろんこのストレスはメンタルばかりでなく、身体の疲労や病気など、各臓器が負担となる状態すべてです。そのような状態の時に人間はストレスに抗うホルモンを分泌して回避しようと動きます。そしてそのホルモンが分泌される臓器は“副腎”であり、その副腎にビタミンC濃度が高いことがわかっています。つまりストレスが多いとビタミンCは多く消費されるということであり、そして思ったよりも多く必要ということです。
ちなみにホルモン分泌組織である副腎は下垂体、さらには視床下部に支配されています。大脳や視床下部のある間脳という部位はストレス反応の中枢であり、ストレスが加わると視床下部から指令が伝わりストレスに抗うホルモンが副腎から分泌されます。また血中に分泌されたホルモンが過度になるとフィードバック機構によりホルモン分泌の抑制が行われています。しかし過度のストレスが加わった状態が続いてしまうと、そのコントロールを失うか、抗ストレスホルモンでは対処できなくなり、視床下部全体の働きも不良となります。視床下部は自律神経や摂食・飲水行動、睡眠、情動、様々なホルモンの中枢なので、ストレス負荷時は、それぞれ症状が現れます。肌であればほとんどが肌荒れ、にきびとして症状が現れるのでしょう。そのような状態の時、ビタミンCが消費されるのは上述した副腎だけでなく、脳組織でも消費率があがります。つまり、ビタミンCは体内のあらゆる組織で消費が加速し、そしてストレス過度となると枯渇しやすくなります。
ビタミンCの有効活用
もうおわかりだと思うのですが、にきびの場合、ビタミンCはやはり思った以上に摂取しなければならないというのが結論です。食事でとれているからよい・・・とは言え、おそらく有効活用できるその量は、生きていくための必要最低限量だと思います。病気のため、アンチエイジングのためとなると、もっと必要になるはずです。にきびはその最たる状態です。そしてビタミンCを体内に摂取する方法として経口摂取と点滴があります。点滴は医療施設でしか行うことができないので、自宅でできる治療となると経口摂取となります。上記のようにストレスは毎日ずっと関わるものです。その軽減、回避のためにできることとなると、毎日摂取可能な経口摂取というのが唯一の方法だと思います。
しかし、サプリメントや処方薬としてのビタミンCを飲み始めたものの、「効果を感じない」と言って中途半端に1~2か月でやめてしまうことが多いと思います。それではもったいない!飲み薬やサプリメントは継続こそであり、まずは3~4か月継続してから評価することが正しいやりかただと思います。そしてもう一つ、十分量を摂取できているか?ということも重要です。摂取したビタミンC(一回量)は消化管からの吸収率に壁があります。だから分散して一日量を稼ぐことが一般的です。また、最近ではその吸収率が飛躍的に上がったビタミンCサプリメント(当院ではリポカプセルビタミンC)もあるので、それらを積極的に活用したいところです。
そうはいっても・・・
にきび治療は一筋縄ではいきません。上記のようにビタミンCを使用してもすぐ結果がでるものではなく、にきびの要因となるもの(ストレス・睡眠不足・食事・運動不足・水分摂取が少ない、便秘など)が全く改善しないのでは、そもそもどのような治療を行っても改善する見込みは低いものです。私生活にも目をしっかり向けて、なおかつビタミンCをうまく活用することがとても大切です。